「苦しかった…」「思い出せない…」連発!
その裏側に隠されたディレクターの思いとは。
今年のBtoB広告賞<スペシャルサイトの部>銀賞受賞に伴い、担当したディレクターに
話を聞かせてほしいと言ったところ、開口一番に言われた一言。
『あの時のこと、思い出せない。というか、必死すぎて1つ1つ覚えている暇なんてなかった…。』
今回は提案から公開までのドタバタを担当ディレクターの思いやエピソードと
共に紹介していきます。
“ないないない!”、担当ディレクターが実は初体験だった3つのこと
-まず、今回のサイトを作るまでの経緯を改めて教えてください。
代理店からコンペに参加しないか、という相談が来ました。
オリンピックという大きなテーマを扱う案件だったので、会社としてもぜひ参加しよう!と
いうことになり、そこで私が指名されました。
正直に言うと・・・コンペをやるような大きな案件のディレクターをやるのは今回が
初めてだったんです。ラソナに入って、今年で6年目。社歴で言うと長い方なんですけど、
入社から数年間、週の半分をクライアントに常駐していたり、さらにまだ先輩社員が
多かったため、誰かの下について仕事をすることが多くて。
大きな案件のメインディレクターなんてやったことない。提案資料だって作った
ことない。大勢の前でプレゼンするなんてとんでもない。
“ないない尽くし”どころか、トリプルでの“ないないない尽くし”からのスタートでした。
本音を言うと「やだなぁ。こわいなぁ…」って思いました。
ただ、それと同時に立場上やらなきゃいけないよな、と頭では理解していたんです。
その時、状況的にこの案件を担当できるのは自分しかいないのは明らかだったし。
そんな風にして、この案件はスタートしました。
ーその後の提案は順調でしたか?
今回はコンペだったのでラソナを選んでもらうために、まず競合がどのような
提案をしてくるのかを予想して、それとは違うパターンで提案しよう!と
いうことになりました。
方向性は決まったのですが、提案書づくりは苦戦しました。話すのが苦手だから、
資料の中にたくさんの情報を詰め込んでしまう習性があって…。
いま、当時の提案書を見返すと文字ばっかりで見づらいし、恥ずかしくなります。
でも、それだけ想いを込めた提案書になりました。
提案した感触はよかったと思います。
クライアントからも他社とは違う視点が評価され、『素晴らしい提案だった』
と言ってもらうことができ、ラソナでやることが決定しました。
コンペに勝ったけど、これはスタート地点。勝った喜びというよりは、
これからスタートしていくんだ…!ということをじわじわと感じて、
身が引き締まったのを覚えています。
自転車でロケハン!ぎりぎり取れた許可書が台無しになった理由とは?
ー今回ラソナは動画制作にも携わったんですよね。
はい、スペシャルサイトの制作以外に、そこに納める動画の制作も一部担当しました。
その一つとして、前回の東京オリンピックの開会式に、上空にオリンピック・マークを
描いたブルーインパルスの元メンバーへインタビューをすることになりました。
クライアントからは、“オリンピックの舞台である国立競技場が見えるところで
インタビューを撮りたい”というオーダー。
時間もない中で今から場所を探すなんて厳しい…と思ったんですが、
確かにその方がいいものができる…!とも思いました。そう思ったら、頑張れば
どうにかできるかも!と力が湧いてきていました。
あと…実はそのとき、直前に自分たちの起こしたミスでクライアントの信頼を
失いかけていたので挽回できるチャンスになるかも、とも思いました。
とにかく国立競技場が見えそうな場所を見にいってみよう!と電動自転車を
借りて現地に向かいました。でも途中まで電動自転車だって気付いてなくて…
スイスイ行ってしまうメンバーについていくのに必死でした(笑)
警察署をまわって撮影のための道路使用許可書をもらえたのは、撮影前日。
本当にぎりぎりでした。その甲斐あってクライアントからもOKが出て撮影する
ことになったのに、撮影当日は雨!予定していた屋外での撮影はキャンセルになり、
せっかくもらった許可書も全てパー。
でも無駄になったとは思ってないし、ゴールに向かってやることがまだまだあったので、
気持ちは次に向かってました。
正しいやり方じゃない?それでも外せない大事なポイント
ー制作をする上で、大切にしていることはなんですか?
仕事として正しいやり方ではないと思うんですが、
クライアントからのオーダーは、どんなことでもNOと言わずに応えようと思っています。
自分が無理すればできることであれば特に。
例えば、夜23時。
クライアントからデザイン修正の依頼が来た。デザイナーはもう帰っている。
明日の朝まで待っていたら間に合わない。そんな時は自分でやってしまいます。
もちろん、それは過去にデザイナーの経験があるから出来ることですが、
状況を見て、そのとき必要で、自分が出来ることなら、職能の領域を越えてでも対応する。
その時のクライアントからのオーダーは“修正する”ということで、
“誰がやるか”は関係ないから。
受託で仕事をしている以上、スケジュールを守るために、やらなきゃいけない
ことはある。いいとか悪いとかじゃなくて、スケジュールを守るのも
ディレクターの仕事だと思うから。
業界的にも仕事をする時間はどうしても長いから、“仕事”と割り切るよりは、
思い入れを持って仕事をしたいなと思ってます。仕事でも気持ちが大事なんです。
不器用と言われてもクライアントに向き合って、1つ1つ応えていくしかできないんです。
仕事もプライベートも狭く深く、というタイプです(笑)
ーこの案件をやって変わったことは?
2020年の東京オリンピックが楽しみになりました。
それはスポーツの祭典というよりも、オリンピックによって東京という都市が
どう変わるのかが気になるという感じかな。
今回、クライアントがやっている事業を知って、オリンピックは一時のお祭りではなくて
未来につながっていくことだと知ったので、2020年どんな風になるのか楽しみです。
あとは、この案件をやりきったことによって、“自分はあそこまで行けるんだ”
という指標ができたように思います。多少壁にぶち当たることがあっても、
あのときに比べたらこのくらい…!と思えるようになったというか(笑)
自分の中の可能性を広げられた案件だったと思う。
だからこうして振り返ってみると、改めて担当できて本当によかったなぁと思います。
※制作したサイトはこちら:GE2020.tokyo
すべての苦労が吹っ飛んだ!最後に言われたクライアントからの一言とは?
ー受賞の報告を聞いたときの感想は?
受賞の一報は電話で来ました。
そこでクライアントの担当者さんが『大事な報告なのに、電話でごめんなさい。
本当は会ってハイタッチしたいくらい』と言ってくれたんです。
受賞したことはもちろんですが、担当者さんが喜んでくれて、
それを自分と共有したいと思ってくれたことが本当に嬉しかったです。
大変だったこととか悩んだことが一気に吹っ飛びました。
オリンピックってとても大きなイベントじゃないですか。普通に生きてたら、
自分が関わることなんてなかったと思うんです。そんな世界の一大イベントである
オリンピックをパートナーとして支えるクライアントがいて、そのクライアントを
少しでも手伝うことができた。そこに自分も間接的にでも関わることができて
貢献できたことは幸せだなと思います。
編集後記)
インタビュー内で本人も語っているが、川畑は話し下手なタイプだ。今回のインタビュー
も決して乗り気ではなかった。
ディレクターは本来、器用に要領よく立ち振舞うことが求められるため、彼女はこれまでも
苦労することが数多くあったようだ。ただその代わり、案件にきちんと向き合うこと、
やるべきことを着実にやることで信頼関係を築いていこうとするタイプだ。小さな積み重ね
でコツコツと信頼を得て、制作を進めていく。決してうまいとは言えないけれど、いいもの
を作りたい、という想いが根底にあるのを、今回インタビューしていてとても感じた。
公開までの2ヶ月半。
今回の制作でも悩むことや自分の無力さを感じること…苦悩することはたくさんあった
よう。ただ、クライアントからの受賞報告の一言によって、自分も一緒に戦ったメンバー
として認めてくれたように思えた。言われたままを作る“作業者”ではなく、共に作り上げる
“メンバー”になれたという実感は、何よりのパワーになり、喜びになったと思う。
■今回制作したサイト:GE2020.tokyo
■その他のラソナの実績をご覧になりたい方はこちら
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